シネマ感覚思考 / cinema-feel-think

1つの記事内に基本、映画紹介パートと、ネタバレありパートに分けて記載しています。お見知り置きくださいませ。



ブログOPEN記念第2弾!! ヴェネツィア国際映画祭2018「金獅子賞」&「銀獅子賞」受賞作品感想!!

 


シネマ感覚思考と申します。
このブログは映画に纏わる事を書き綴るブログです。

 

 


先日開催された、第31回東京国際映画祭コンペティション部門の特集に引き続き、↓↓

ブログOPEN記念!! シネマ感覚思考的、第31回東京国際映画祭コンペティション部門アワード発表!!!&総評!!!! - シネマ感覚思考

 

 

   ブログOPEN記念第2弾としまして、東京国際映画祭にて先行上映された、ヴェネツィア国際映画祭「金獅子賞」作品『ROMA/ローマ』&「銀獅子賞」作品『女王陛下のお気に入り』の感想記事を書きました。

  (追記)アカデミー賞では、両作品とも最多ノミネート10部門となりました。結果は、『ROMA/ローマ』が「外国語映画賞」「監督賞」「撮影賞」を受賞、『女王陛下のお気に入り』が「主演賞」を受賞しました!!

それでは、以下のリンクからどうぞ↓↓↓

 

 

 

 

 

  2本とも、女性に纏わる良質な作品でした。アプローチも作品のトーンも違うものの、女性の存在感を前面に押し出した、今の時代の映画だと思います。

  特に『女王陛下のお気に入り』は、少し前であれば作品として製作するのも、成立させるのも難しかったのではないかと思うぐらいです。こういった作品が増えていくのは望ましいですね。今後は、女性監督の増加も起きていって欲しいところです。
  昨年の#Me too運動の流れが継続している雰囲気を感じますが、そのまま押し進んでいってほしいなと思います。

 

 


『ROMA/ローマ』はじっくりと、
『女王陛下のお気に入り』は吹き出して、
それぞれお楽しみ頂けたら幸いです。

『ROMA/ローマ』はNetflixで12月14日から配信中、『女王陛下のお気に入り』は2月15日公開です。

 

ぜひ、今後ともシネマ感覚思考をよろしくお願い致します。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

サウス・バイ・サウスウェスト(SXSW)2019アワード

 

 

  アメリカのテキサスにて、3/8〜3/17に、映画・音楽・ITの祭典、サウス・バイ・サウスウェスト(SXSW)が開かれました。SXSWでは、映画作品のコンペティション部門があります。その結果と受賞作品を書き綴りましたので、以下からどうぞ。

   YouTubeかVimeoにて作品が発表されている短編の受賞作に関しては、リンクしましたので、以下それぞれの動画をご覧いただけます。SXSW2018にセレクションされた短編が、去年の12月に公式HPにて一部視聴可能になっているようですので、2019でセレクションされた短編も今年の年末にアップされるかもしれません。気付いた時に、またこの記事にリンクを貼って更新したいと思います。

 

 

 

 

 

SXSWとは

  毎年3月にテキサス州オースティンで行われる大規模なイベントで、毎年規模を拡大している。音楽フェス・映画祭・IT企業イベントが、街全体を会場にして行われる。

  映画祭のアワードは、審査員賞・SXSW特別賞・観客賞の大きく3つ。審査員賞は各部門毎に審査員がいて、授賞作品を選定している。また、それぞれ部門毎に観客賞が贈られる。SXSW特別賞は、映画の関係団体・企業がそれぞれの部門を独自に作り、授賞作品を選定している。

 

 部門毎の審査員は以下のリンクからどうぞ↓

 

✳︎以下の和訳は、暫定的にシネマ感覚思考が行ったものになります。

 

 

 

 

 

 

 

審査員賞

Jury Awards

 

長編劇映画コンペティション部門

Narrative Feature Competition

 「Winner」

『Alice』

Director: Josephine Mackerras
長編一作目

 

 

 「審査員特別賞-ベストアンサンブル」

Special Jury Recognition forBest Ensemble


『Yes, God, Yes』
Director: Karen Maine
長編一作目 初短編が元になった作品

 

 

 「審査員特別賞-ブレイクスルーボイス」

Special Jury Recognition for Breakthrough Voice


『Saint Frances』

Director: Alex Thompson
長編一作目

 

 

 

 

長編ドキュメンタリー映画コンペティション部門

Documentary Feature Competition

 「Winner」

 『For Sama』

Directors: Waad al-Kateab, Edward Watts
長編一作目

 


「審査員特別賞-技術賞」

Special Jury Recognition for Empathy in Craft


『Ernie & Joe』

Director: Jenifer McShane

 


「審査員特別賞-優秀賞」

Special Jury Recognition for Excellence in Storytelling


『Nothing Fancy: Diana Kennedy』

Director: Elizabeth Carroll

 



短編賞

Short Film Jury Awards
Presented by Vimeo

 

 

ミュージックビデオ賞

 Music Videos
「Winner」
「Pa’Lante」

"Hurray for The Riff Raff"
Director: Kristian Mercado


"Pa’Lante"はプエルトリコのスラングで"前へ"の意

 


「審査員特別賞」

Special Jury Recognition
「Quarrel」

"Moses Sumney"
Directors: Allie Avital, Moses Sumney

 

 

短編劇映画賞

Narrative Shorts

「Winner」

『Liberty』
Director: Faren Humes


「審査員特別賞」

Special Jury Recognition

『The Orphan』
Director: Carolina Markowicz

 

 

短編ドキュメンタリー映画

Documentary Shorts

「Winner 」

 『Exit 12』
Director: Mohammad Gorjestani


「審査員特別賞」

Special Jury Recognition

『All Inclusive』
Director: Corina Schwingruber Ilić

 

 

ミッドナイト短編賞

Midnight Shorts

「Winner」

『Other Side of the Box』
Director: Caleb J. Phillips

 

 

短編アニメ賞

Animated Shorts

「Winner」

 『Guaxuma』
Director: Nara Normande

↓予告編(Vimeo)


「審査員特別賞」

Special Jury Recognition

『Slug Life』
Director: Sophie Koko Gate

 ↓予告編(Vimeo)

 

 

テキサス短編賞

Texas Shorts

「Winner」

『I am Mackenzie』
Director: Artemis Anastasiadou


「審査員特別賞」

 Special Jury Recognition

『A Line Birds Cannot See』
Director: Amy Bench

 

 

テキサス高校短編賞

Texas High School Shorts
「Winner」

『Fifteen』
Director: Louisa Baldwin


「審査員特別賞」

Special Jury Recognition

『Double Cross』
Director: Amiri Scrutchin

 

 

パイロット版コンペティション
Episodic Pilot Competition
「Winner」

『Maggie』
Director: Sasha Gordon

 

「審査員特別賞」
Special Jury Recognition
『Revenge Tour』

Directors: Andrew Carter, Kahlil Maskati

 

 

SXSW映画デザイン賞

SXSW Film Design Awards


「優秀ポスターデザイン賞」
Excellence in Poster Design

『Daniel Isn’t Real』
Designer: Jock
Design Company: 4twenty limited


「優秀タイトルデザイン賞」
Excellence in Title Design

『スパイダーマン:スパイダーバース』

感想記事
Directors: Brian Mah, James Ramirez


「審査員特別賞」
Special Jury Recognition


『The Darkest Minds』


Director: Michelle Dougherty

 

バーチャル作品賞

Virtual Cinema


「360° ドキュメンタリー賞」

360° Video: Documentary

「Send Me Home」

Director: Cassandra Evanisko


360° 劇作品賞

360° Video: Narrative

「Metro Veinte: Cita Ciega」
Director: Maria Belen Poncio


インタラクティブ賞

Interactive

「Runnin’」

Director: Kiira Benzing


ストーリーテリング賞

Storytelling

「Gloomy Eyes」

Director: Jorge Tereso, Fernando Maldonado


芸術賞

Best Use of Immersive Arts

「Home After War」

Director: Gayatri Parameswaran


未来賞

Special Jury Recognition – The Future of Experience

「Traverse」
Director: Jessica Brillhart

 

 

 

SXSW特別賞

SXSW Special Awards

 

「Karen Schmeer映画編集フェローシップ賞」

Karen Schmeer Film Editing Fellowship

公式HP:The Karen Schmeer Film Editing Fellowship

ドキュメンタリー映画編集職の支援団体
Presented to:

 『Victoria Chalk』

 

「Vimeoピックアップ賞」

Vimeo Staff Pick Award
Presented to:

『Milton』

directed by Tim Wilkime

 

「ZEISS映画撮影賞」

ZEISS Cinematography Award
Winner:

『Amazônia Groove』

directed by Bruno Murtinho

 

「Louis Black "Lone Star"賞」

 Louis Black “Lone Star” Award
Winner:

 『The River and the Wall』

 directed by Ben Masters

 

「Adam Yauch Hörnblowér賞」

Adam Yauch Hörnblowér Award
Presented to:

 『Tito』

 directed by Grace Glowicki

 

「チェリーピックス女性フィーチャー賞」

CherryPicks Female First Feature Award

Winner:

『Alice』

directed by Josephine Mackerras

  "チェリー・ピックス"とは、女性の視点を、映像作品の評価に反映しようと"ロッテン・トマト"を意識して作られたサイト。↓の記事に詳しい。

 

「チェリーピックス審査員特別賞」

CherryPicks Special Jury Recognition:

Winner:

 『Days of the Whale』

 directed by Catalina Arroyave Restrepo

 


観客賞

Audience Award

 

長編劇映画コンペティション部門

Narrative Feature Competition

  『Saint Frances』

Director: Alex Thompson

 

長編ドキュメンタリー映画コンペティション部門

Documentary Feature Competition

『For Sama』

Directors: Waad al-Kateab, Edward Watts

 

「ヘッドライナー賞」

Headliners

『Long Shot』

Director: Jonathan Levine

 

「劇映画スポットライト賞」

Narrative Spotlight

『The Peanut Butter Falcon』

Directors: Tyler Nilson, Michael Schwartz

 

「ドキュメンタリー映画スポットライト賞」

Documentary Spotlight

『Running With Beto』

Director: David Modigliani

 

「視覚賞」

Visons

『The Garden Left Behind』

Director: Flavio Alves

 

「ミッドナイト賞」

Midnighters

『Boyz In The Wood』

Director: Ninian Doff

 

「プレミア賞」

Episodic Premiere

『Rammy』

Show Runner: Bridget Bedard


「24 Beats Per Second賞」

24 Beats Per Second

『Nothing Stays the Same: The Story of the Saxon Pub』

Director: Jeff Sandmann

 

「グローバル賞」

Global

『Cachada: The Opportunity』

Director: Marlén Viñayo

 

「映画祭賞」

Festival Favorites:

『Raise Hell: The Life & Times of Molly Ivins』

Director: Janice Engel

 

「優秀タイトルデザイン賞」

Excellence in Title Design

 『スパイダーマン:スパイダーバース』

感想記事

Directors: Brian Mah, James

 

 

 

 

 

関連記事

 

 

 

 

 

映画感想:『ブラック・クランズマン』&"偏見"に纏わる論

 

 

 

 

Do the Right Thing.

 

 

 

 

 

 

『ブラック・クランズマン』

             原題:BlacKkKlansman

 

 

 

 

 

 

 

あらすじ
  アメリカ合衆国を二分した南北戦争時に、奴隷制を掲げ、アメリカ連合国を名乗った南部地域。その地で、白人こそ至上という考えのもと、人種差別を行う団体"KKK"が生まれ、未だに存在している。時は1972年、白人しかいない警察署に初のアフリカ系の警官が誕生した。これは、そのブラザーが、"KKK"に潜入捜査するという、ありえない、マジやべー真実に基づいた物語。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

感想
  ふっ飛ばされました。観終わった後、放心してなかなか席を離れられませんでした。久しぶりに味わった感覚です。スパイク・リー監督の明確なメッセージにやられてしまいました。
  劇中、アフリカ系の主人公を"KKK"が受け入れるという、笑ってしまうような、とある展開には、"KKK"に対する呆れと、主人公に対する、よくやってくれました感を味わえる本作。"人種差別"、"KKK"という文字が並ぶと重さを感じますが、物語自体はドラマ的に楽しめる仕上がりになっています。そのドラマをベースに、スパイク・リー監督は要所要所で強烈なメッセージを叩き込んできます。その演出や表現方法はさすがすぎます。今こんな方法を取れるのはスパイク・リー監督だけじゃないかと思ってしまいます。凄いです。
  "KKK"が未だにあるという事実、現在との共通点、スパイク・リー監督からのメッセージ、観るならまさに今、という映画ではないでしょうか。
  祝、カンヌ国際映画祭「グランプリ」、アカデミー「脚色賞」受賞!

 

 

 

 

 

 

 

おすすめです!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  • "偏見"に纏わる論
  • →ネタバレ感想(以下、ネタバレを含みます。)
  • アカデミー作品賞『グリーンブック』を巡る問題
  • 演出についての雑記
  • 関連リンク

 

 

 


"偏見"に纏わる論

 

  ここは、作品に纏わる事象について取り上げて、先端知識をシネマ感覚思考なりにまとめるコーナーです。今回は"偏見"について取り上げます。学問分野で、"偏見"はいくつかに分類できる事が示唆されており、その分類をここでは紹介したいと思います。
  本作に登場する"KKK"は、白人至上主義を掲げているため、人種差別を行なっているのですが、他の集団への差別も行なっています。主に、アフリカ系の人々に対する人種差別を行なっているというイメージがあると思いますが、白人至上のため、自分たち以外の人種全てを攻撃しています。日系を含むアジア系然り、ラテン系、インド系、中東系、そしてユダヤ人などなどが攻撃対象の人種差別団体です。また、"KKK"の構成は男性が中心となっており、女性差別が行われています。本作内でも、配慮しているように見えて、思いっきり差別的な事をしている描写が伺えます。
  そして、そんな不利益な扱いや排除行為である差別の根底にあるであろうものが偏見です。

 

 偏見とは、特定の集団やその構成員に対する固定的な態度を指す概念であり、集団をベースとして個人を判断する事である。

  引用:「最新心理学辞典」,平凡社,2013

  

人種による偏見は、アメリカの研究で、2つに分類できる事が分かっています。

 

1つ目が"古典的偏見"で、

「対象の集団は道徳的および能力的に劣っている」

という信念に基づくものです。典型的な偏見といった感じですね。「あいつらは犯罪者ばかりで、バカばかりだ」みたいなものです。

 

2つ目が"現代的偏見"です。これは、個人的には"現代的偏見"というより、"定型論的偏見"と呼んだ方がしっくりくるような、4つの論理展開から成る偏見です。

 

「①対象の集団に対する偏見や差別は既に存在しておらず、

②存在する格差は不平等からくるものではなく、自身が努力をしないからであり、

③それにもかかわらず過剰な要求を行なっており、

④本来得るべきもの以上の特権を得ている」

という信念に基づく偏見です。

 

だから、逆に我々が不利な立場に追いやられていると、そういう主張に結びつくような偏見なのかなと思います。誰しも似たような事を聞いた覚えがあるのではないでしょうか。


  今回、この2つの偏見を紹介したのは、『ブラック・クランズマン』で"定型論的偏見"にかなり似たような事を"KKK"が主張しているからです。"古典的偏見"は言わずもがな、うんざりするほど台詞として出てきます。"定型論的偏見"は①に言及があり、逆差別を受けているといった主張がなされています。当然ですが、これらの主張に裏付けはないものであり、正当性はないもので、科学的に偏見として分類され得るものです。


  この"古典的偏見"と"定型論的偏見"は、人種による偏見だけでなく、女性や同性愛者に対しても見られるものである事がアメリカの研究で指摘されています。アフリカ系の人々や女性、同性愛者の地位が徐々に、徐々にアメリカで改善されてきている事を考えると、この"定型論的偏見"は、対象の集団の地位が改善された場合に普遍的に見られるものである可能性があります。


  日本においても、在日コリアンに対する"古典的偏見"と"定型論的偏見"について研究が行われた例があります。このような偏見や差別に関する科学的な研究は、アフリカ系の人々やユダヤ人に対する偏見や差別に関する研究によって発展してきました。アフリカ系の人々やユダヤ人が長らく受けてきた不平等や迫害の歴史から分かったことです。その苦しみから生み出された知見を活かし、理論武装して、理不尽な偏見や差別に対抗していきたいですね。


  本作では、先程紹介したアフリカ系の人々やユダヤ人、女性に対する差別が描かれていましたが、同性愛者に対する蔑称も幾度も登場しています。アフリカ系の人々やユダヤ人、女性に対する差別への応答はきっちり作品内でしているのですが、同性愛者に対する応答が仕切れていなかったのは、この作品の数少ない残念なところでした。もったいないですよ、スパイク・リー。

 


参考文献:「レイシズムを解剖する 在日コリアンへの偏見とインターネット」高史明,勁草書房,2015

 

 

 

 

 

 

 以下、ネタバレ全開になります。↓↓↓

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